サイト内検索

ホームふるさと企業の魅力紹介>株式会社 山下工業所(下松市)

ふるさと企業の魅力紹介

株式会社 山下工業所(下松市)

 ものづくりのまち下松は、大正時代に操業を開始した日立製作所が中核となって発展した全国でも稀な鉄道車両ビジネスの集積地である。部品製造を請け負う多くの地元企業が、長い歳月をかけて各社固有の技術を進展させ、専門性を生かした分業体制を構築しており、世界に誇れる日本の鉄道を裏方で支えている。日立製作所の協力会社のひとつとして、独自の打ち出し板金技術を持ち、新幹線の「顔」からバイオリンまで製作している職人の会社、株式会社山下工業所の山下竜登社長にお話をうかがいました。

―創業の経緯や、製造実績などをお聞かせください

イメージ
打ち出し板金

 弊社は、東海道新幹線開業の前年(昭和38年9月)、日立さんから強力な後押しをいただき、新幹線の顔(先頭構体。業界用語ではオデコ)をつくる会社として創業しました。創業の二年前(昭和36年)、日立製作所専属の板金工であった当時二十六歳の父(山下清登・現相談役)が、新幹線試作車両のオデコの現場リーダーに抜擢されたのが新幹線とのご縁のはじまりで、これは、打ち出し板金と呼ばれるハンマーで金属板を叩いて三次元曲面に成形する技能ですが、他に職人がいなかったからだと聞いています。

 創業以来、新幹線のほか、特急電車やモノレール、リニアモーターカーなどをおつくりし、新幹線は0系から現在製造中の東北新幹線次世代車両までで22車種、納入数は記録に残る日立さん分だけの集計ですが330両を超えたところです。モノレールは海外向けも含めて約250両です。オデコの他は、運転室を構成する天井や内壁、計器盤など、やはり打ち出しが必要な三次元曲面のある部品が多いです。
 車両部品以外では、半導体製造装置向けの精密板金品を四半世紀以上おつくりしておりますが、こちらも極少量生産の特注部品ばかりです。他には、変ったものですと、最近ではJAXA(宇宙航空研究開発機構)さんの極超音速研究機主翼のCFRP(炭素繊維強化プラスチック)成形型があります。

イメージ
山下清登相談役(中央)と熟練技能者

―何故下松に車両関連企業が集まっているのでしょうか?

 車両は非常に多くの種類の部品で構成されますから、下松に部品製造の企業群が生まれたのは理にかなっていると思います。車両部品は典型的な多品種少量生産品で、部品ひとつあたりの製造数はどんなに多くても数十から数百のレベル。非常に少ないうえ、仕様がどんどん変わり、図面を渡されてから納品までに許される期間も短く、発注も不定期が普通。お客様のそばでつくっていないと、臨機応変な対応は無理で納期も守れない。遠隔地でつくるとなると商売として成立しなかったはずです。物流やコミュニケーションといった計測可能な見えるコストと手間だけ考えても、相当、数がまとまらない限り、商売にならないと考えるのが自然でしょう。例えば、弊社は、日立さんから目と鼻の先にあり、色々な部署の方が頻繁にお越しになりますが、仕様変更の打ち合わせや出荷前検査等、現場で現物を見ながら詰めが必要な場合、即打ち合わせもでき、その場その時に即動けるので、重宝いただいていると思います。

 立場を変えた、発注取引も同様で、自社購入が必要な材料や部品、自社ではできない加工については色々な方にお願いしていますが、まずは地元企業が基本です。やはり物理的な距離が近いことによるメリットが多いからです。対面ですぐにお話できます。地元に腰を据えておられる長いお付き合いの顔の見える企業さんだから、という信頼感も大きいですね。品質と値段といった単純なことだけではなく、柔軟性やコンサルティングサービス、安心といった目に見えない便益も、実際に仕事を進めるうえでは重要ですから。

平成19年「ものづくり日本大賞」ドキュメント
※再生ボタンを押すと映像が再生されます。

―熟練の技術が評価され、数々の賞を受賞されていると聞きますが

 下松には、市長が創設された、ものづくり現場で頑張っている技能者個人への表彰制度があり、弊社では、これまでに七名が表彰をいただいております。この表彰がご縁となって、その後、「現代の名工」など数々の栄誉ある賞の受章者が誕生しました。大変ありがたいことです。
 会社としては、平成19年の「ものづくり日本大賞」、平成20年の「元気なモノ作り中小企業300社」への選定などをいただき、昨年は、技能伝承を通じた地域社会への貢献により、地元山口銀行の地域企業助成基金殿から二度目の表彰を頂戴しております。

―技術の継承、人材育成という点はいかがですか

 「技」は、他の仕事と同様、実際に現場で仕事をしながら、盗む、といいますか、基本は継承者による独習、先輩達の動きを見て、真似てみて、といったことの中でしか身に付けようがないと思います。十年でやっと一人前ですので、生まれ持った器用さに加え、長い自己修行に耐えるだけの根性が要ります。結局、どの世界でも同じでしょうが、目標に向かって、持てる才能を自己開発できる人材を、いかに発掘、採用できるかにかかってきます。
 今後、東北新幹線の更新車両を中心にかなりのボリュームの受注が見込まれ、また、つい先日工場長職を離れた、板金加工の世界では人間国宝のような存在の創業メンバーが二人おりますが、責任感が強く、指導者としても超一流ですので、少なくとも、技能の継承には好環境が整っています。この春には、新卒の二名がチームに加わる予定です。

―アルミ製のチェロ、バイオリンについて

イメージ
アルミ製チェロ

 家業を継ぐため三年前に入社した当時、打ち出し板金部門に十代二十代がおらず、また、個性が活かせてやりがいは大きいものの、真価が理解されていないどころか、世間での認知度はゼロで人を集められるだけの土壌がありませんでした。このままでは担い手不在で技が途絶え、ゆくゆく会社が立ち行かなくなってしまう。大きな危機感を持ちました。どうしたら若い人に技の「存在」を知ってもらうことが出来るのか。金属製の弦楽器はそういった状況で生まれました。大きな願望が込められています。
 今では看板娘として「技」のPRに活躍してくれています。下松市や山口県が主催される式典など、多くの人が集まる場所での展示、演奏の機会をいただけるまでになりました。今後も改良を進め新作を作り続けてゆきますのでご期待ください。

イメージ
マグネシウム製バイオリンの製作

―人材確保策について

 父とともに近場の学校での講演を始めました。中学校卒業後、地元の自動車修理工場で打ち出し板金の技を身につけ、鉄道車両部品づくりに応用して、新幹線とのご縁があってと、半世紀を越える職人人生の話です。これまでに七校お伺いしましたが、毎回、多数の感想文を頂戴します。将来、職人になりたいと、入社宣言してくれる小学生が現れてきました。

 進学と仕事で四半世紀離れていましたが、帰ってきてあらためて、この地の良さを感じます。生まれ育った懐かしい土地、ということを割り引いても、職住近接が可能で利便性がよく、豊かな自然に囲まれており、落ち着いて暮らすには最適な環境が整っています。ただひとつ、大変残念なのは、新幹線が地元でつくられているのを知っている子供たちが極めて少ないということです(笑い)。小さいうちから地元の技への理解者を増やし、将来の担い手候補を見つけるためにも、余裕があれば、本当は、子供たち向けの打ち出しの学校をやってみたいですね。

イメージ
山下竜登 社長

―チェロ奏者ヨーヨー・マさんを招きたい

 当面の夢はチェロ奏者のヨーヨー・マさんにうちの工場の中でバッハを弾いて貰うことです。地元の子供たちを呼んで。間違いなく、多くの県民の方に技の存在を知っていただく良い起爆剤になると思います。

 繰り返しになりますが、まずは、「技」の存在と真価を知っていただき、興味をもってくれる若い人材の中から、「現代の名工」の卵を発掘、育成し、技をつなぐ。社会のためによいものを残す。そのメカニズムを作る。これが事業継承者としての私に与えられた最大の使命です。

問い合わせ先

会社名 株式会社 山下工業所
住所 山口県下松市東海岸通り1番27
TEL 0833-41-3333
URL http://www.yamashita-kogyosho.com/

ページトップに移動